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イデア綜合法律事務所有志

原子力発電所の問題Nuclear power plant problems

原子力発電所の問題

Q1 原発の発電の仕組みを教えてください。
  
A 原子力発電も火力発電と同じように、水を沸騰させて蒸気を発生させ、その蒸気でタービンを回して発電します。火力発電は、石炭や石油を燃やして発生する熱で水を沸騰させますが、原子力発電は、核分裂しやすい物質を核分裂させ、その際に放出される熱エネルギーを利用して水を沸騰させます。
    核分裂は、模式的に言えば、原子核に中性子がぶつかって、2〜3の核種に分裂し、その際に中性子が飛び出し、その中性子がさらに原子核にぶつかって核分裂を引き起こすというものです。


Q2 福島原発の構造について教えてください。


A 福島原発は沸騰水型原発(BWR)と言われるもので、大まかに言って、圧力容器を囲んで格納容器があり、格納容器は原子炉建屋の中にあり、原子炉建屋と配管で繋げたタービン建屋があります。
70気圧という高圧にした鋼鉄製の圧力容器の中に水を張り、その中に入れた核燃料に核分裂を起こさせ、その際に放出される熱エネルギーを利用して水を沸騰させて蒸気を作り、その蒸気でタービンを回して発電し、タービンを回した蒸気は、海水で冷やして(熱交換して)水にして圧力容器に戻します。核燃料は長さ4m位の燃料棒を集めた燃料集合体として数百体も圧力容器の中に入っています。
この圧力容器から放射能が漏れても外部に流出しないように、圧力容器の外側に格納容器があり、さらにこれらを納めるのが原子炉建屋です。


Q3 地震発生時に制御棒を入れて停止したというのはどういうことですか。

A 制御棒は、核分裂に必要な中性子を吸収するもので、地震が発生して一定以上の揺れを感知すると制御棒が燃料棒の間に挿入される仕組みになっています。燃料棒は4m位ありますから、地震の揺れで燃料棒の中間くらいが撓んで制御棒が入らないことも想定されますが、今回の地震では制御棒が挿入され、核分裂は停止しました。


Q4 発電が停止したのに冷却しなくてはいけないのはどうしてですか。

A 核分裂によって、色々な核種の放射性物質が燃料棒の中に作られています。これらは、安定的核種に形を変えていくのですが、その過程で熱エネルギーを出します。これを崩壊熱というのですが、原子炉を停止しても、かなりの熱量の崩壊熱が相当の期間発生しています。これを冷却しなければ、燃料とこれを覆っている被覆管と呼ばれるものが溶けだしてしまいます。そのために、通常は、冷却のための水を循環させて、熱を取り続けます。この通常の冷却水が失われる事態には、ECCS(緊急炉心冷却システム)が作動して、一気に水を圧力容器に注入する設計になっています。


Q5 福島第1原発はどうして冷却できないのですか。

A 通常の冷却も、ECCSも、電気がなければ作動しません。今回の地震で、外部電源は喪失し、非常用ディーゼル発電も原料の重油タンクが津波で流されてできなくなり、冷却できなくなりました。
冷却されないうちに燃料棒を冠水していた水が崩壊熱で蒸気になり、燃料棒が露出して高温になり、その後海水を注入する作業が行われていますが、燃料棒を冠水させるまでの注入ができません。海水を注入するポンプのパワー不足、燃料棒が高温になっているので直ぐに蒸気になってしまう、圧力容器内の内圧が蒸気で高くなって注入が困難になっている等の原因が考えられます。或いは、圧力容器に漏れる箇所が生じているのかも知れません。


Q6 なぜ格納容器から放射能で汚染された蒸気を放出したのですか。

A 格納容器の設計基準値の圧力を超えそうになりました。格納容器が破壊されれば大量の放射能が外部に放出されるので、圧力を下げるためにそれよりは少ない放射能の放出を選択しました。


Q7 使用済み燃料プールというのは何ですか。

A 核分裂を終了した燃料棒も崩壊熱を出し続けますので、燃料棒をそこに入れて冷却するための水を張ったプールです。原子炉建屋内の格納容器の上部にあります。


Q8 4号機の爆発、火災はどうして起こったのですか。
  
A 燃料プールの水も常に循環させておく必要があるのですが、循環するために必要な電気が失われたために、プール内の水が使用済み燃料の崩壊熱で温められて徐々に蒸発して燃料棒が露出した、或いは、燃料プールの水が地震の揺れで波打って流出して燃料棒が露出し、露出した燃料棒が高温になり、蒸気の酸素と反応して水素が発生し、その水素が燃えました。


Q9 放射能とは何ですか。
  
A 放射線を出す能力を放射能といいますが、放射線そのものを放射能と言ったり、放射線を出す物質(放射性物質)を放射能と言ったりすることもあります。
    人体に影響を与えるのは、放射線です。


Q10 放射線とは何ですか

  A 主な放射線は、α線、β線、γ線、中性子線です。
   原子は、陽子と中性子から成る原子核と、その周りにある電子からできています。元素番号と言うのは陽子の数の順番に並んでいます。また、陽子の数と中性子の数を足したものが質量数で、同じ元素番号でも異なる原子になります。例えば、ウラン235、ウラン238のように、元素と質量数で表示されます。
    原子には、他の原子に変わろうとする種類が多数あり、他の原子に変わる(壊変)際に、α線、β線、γ線を出して変わります。使用済み燃料にはこの放射性物質が大量に存在します。また、核分裂の際には中性子が出ます。
これらの放射線は大きなエネルギーを持っていて、人体に作用すれば人体の細胞に影響を与えます。放射能による人体への影響と言われるものは、これらの放射線による影響のことです。


Q11 放射能の半減期とは何ですか。

A ある核種が放射線を出して他の核種に変わると元の核種はなくなりますが、ある核種が半分の量になる時間を半減期といいます。この半減期は核種ごとに時間が違いますので、放射能汚染対策等を考える際の重要な資料になります。


Q12 放射能による被害を考える場合に参考になる概念を教えてください,

A 被曝した直後に放射能の影響による障害が出る場合を急性障害といい、ある程度の期間経過後に障害が出る場合を晩発性障害といいます。
身体の外部にある放射性物質からの放射線による被曝を外部被曝といい、透過力の強い放射線が問題になります。体内に取り込まれた放射性物質からの放射線による被曝を内部被曝といい、透過力が弱い放射線でも問題になります。


Q13 放射能の程度と人体への影響の関連について教えてください。

A 放射能の量と人体への影響の関係は一義的に明確なものではありません。そこで、国際放射線防護委員会(ICRP)は、正当化の原則、最適化の原則、線量限度遵守の原則を打ち出し、放射線は利用の便益が害よりも大きい時に利用が許されること、被曝線量はなるべく少なくし、制限被曝線量値は遵守すべきであると勧告しています。レントゲン、CTは有用な目的のために使用が許されていますが、観測値とこれらの放射線量を比較して全てを語ることはできません。
人体への影響を考える放射能の単位をシーベルトといいます。1ミリシーベルトは1/1000シーベルト、1マイクロシーベルトは1/1000ミリシーベルトです。日本では、ICRP勧告に基づき、一般人の制限線量は年間1ミリシーベルト、原発関係従事者は年間50ミリシーベルトでかつ5年間平均が20ミリシーベルトを超えないこととされています。
緊急時の職業人の制限線量は100ミリシーベルトとされていましたが、急遽250ミリシーベルトに上げられました。


Q14 避難指示の根拠は何ですか,

A 原子力災害対策特別措置法15条3項で、内閣総理大臣は、原子力緊急事態が発生した時は、市町村長及び都道府県知事に対し、避難のための立退き又は屋内への避難の勧告又は指示を行うべきこと、その他の緊急事態応急対策に関する事項を指示するものとすると規定しています。
 

Q15 屋内退避、避難の目安は何ですか。

  A 原子力安全委員会が「屋内退避及び避難についての指標」という指針を作成しており、予測線量が10〜50ミリシーベルトであれば、「住民は自宅等の屋内退避する、但し、中性子線又はガンマ線が放出される時は、コンクリート建屋に退避するか、避難すること」、予測線量が50ミリシーベルト以上であれば、「住民はコンクリート建屋内に退避するか、避難すること」と規定されています。


Q16 いつまで避難しなくてはいけないのですか。

  A 原子力災害対策特別措置法15条4項で、内閣総理大臣は、原子力災害の拡大の防止を図るための応急の対策を実施する必要がなくなったと認めるときは、原子力安全委員会の意見を聴いて、原子力緊急事態解除宣言をするものとすると規定しています。
    重要な判断資料として、その地域の放射線量がどの程度減っているかを推定しなくてはなりませんが、Q11の放射能の半減期が推定に利用されますから、どのような放射性物質がどの程度放出されたかが重要になってきます。


Q17 原子力災害の被災者にはどのような保護が与えられるのですか。

  A 原子力緊急事態により国民の生命、身体又は財産に生ずる被害を原子力災害といい(原子力災害対策特別措置法2条1号)、同法は原子力災害から国民の生命、身体及び財産を保護することを目的として制定されています。
緊急事態応急対策として、緊急事態応急対策実施責任者が、「被災者の救難、救助その他の保護」(同法26条1項3号)、「緊急輸送の確保」(同6号)、「食糧、医薬品その他の物資の確保」(同7号)、「その他原子力災害の拡大の防止を図るための措置」を実施する(同条2項)と規定しています。
原子力緊急事態解除宣言があった以降には、原子力災害事後対策が実施されます(同法27条)。生活面に直接関わる対策は、「健康診断、心身の健康に関する相談、その他医療に関する措置」(同条1項2号)、その他原子力災害の拡大の防止又は原子力災害の復旧を図るための措置」(同4号)が規定されています。
具体的に必要な措置は、多種多様ですから、真に必要な対策が速やかに実施されることが同法の要求するところです。


Q18 原子力損害賠償法でどこまで賠償されるのですか。

A 原子力損害の賠償に関する法律にいう原子力損害とは「核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用若しくは毒性的作用(これらを摂取し、又は吸入することにより人体に中毒及びその続発症を及ぼすものをいう)により生じた損害をいう」(同法2条2項)と規定されています。
原発の場合は、核分裂過程で中性子、核分裂生成物が発生し、核分裂生成物が壊変(Q10参照)する際にα線等の放射線が発生します。これらから外部被曝、内部被曝(Q12参照)したことによる損害が典型的な場合です。
核分裂過程の作用、核燃料物質等の放射線の作用には、熱エネルギーを発生させることも含まれますから、爆発によって直接被害をこうむった場合も含まれるでしょう。
避難して何年間も家に帰れなかったことによる損害は相当因果関係の範囲の問題です。


Q19 原子力事業者、原子力機器メーカーの責任を教えてください。

  A 原子力事業者の責任については、「原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。但し、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたものであるときは、この限りではない。」(同法3条1項)に規定されています。
1項本文は、原子力事業者の無過失責任を規定しています。問題は但書です。想定外の地震といえば異常に巨大な天災地変になるとすると容易に免責されてしまいます。過小評価すれば免責されるのはおかしな話です。原発の耐震設計では、極めてまれであるが発生する可能性のある地震をさらに不確かさを考慮して想定しなければならないのですから、異常に巨大な天災地変とすべきではないと考えます。
原子力機器のメーカーの責任については認めません。同法4条1項に「前条の場合においては、同条の規定により損害を賠償する責めに任ずべき原子力事業者以外の者は、その損害を賠償する責めに任じない」と規定して原子力事業者に責任を集中しています。そして同条3項に「製造物責任法の規定は適用しない」と規定して製造物責任を認めません。原子力発電所の安全性確保に重大な責任を負っている原子力機器メーカーの責任を認めないのは法の欠陥だと考えます。


Q20 放射能汚染された食品の取扱について教えてください。

A 平成23年3月17日,厚生労働省は,原子力安全委員会が作成していた「原
子力施設等の防災対策について」のうちの「飲食物の摂取制限に関する指標」
を急遽採用して暫定規制値とし,これを上回る食品については,食品衛生法第
6条2号の「有害な,若しくは有害な物質が含まれ,若しくは付着し,又は
これらの疑いがあるもの」として食用に供されることがないよう販売その他
について十分処置されたいと各自治体に通知しました。
放射性ヨウ素ならば,飲料水,牛乳・乳製品で300ベクレル,根菜,芋
類を除く野菜類で2000ベクレル,放射性セシウムならば,飲料水,牛乳・
乳製品で200ベクレル,野菜類,穀類,肉・卵・魚・その他で500ベク
レル,乳児用の牛乳・乳製品で100ベクレルが制限値です。
1ベクレルとは,原子核が1秒間に1個の崩壊を起こす場合をいいます。


Q21 農産物の出荷制限の指示を出しておきながら,食べても人体に影響を
及ぼさないという政府報道はどのように理解したらいいのでしょうか。


A 食品衛生法における今回の暫定規制値は, 原子力安全委員会の「飲食
物摂取制限に関する指標」を採用したものですが, その指標の作成
は, I C R P 等の国際的動向を踏まえ, 甲状腺の線量年5 0 ミリシ
ーベルトを基礎にして食品の摂取量等を考慮して策定されたもので
す。放射線防護の観点から遵守しなければならない基準ですので,
農作物の出荷制限は, 止むを得ない措置です。
それでいながら,人体に影響する程度の放射線量ではないというのは,混
乱させるだけの公報です。人体に対する影響は明確ではなく,低線量でも人
体に対する影響があることもあるので出荷制限をしているが,低線量である
ほど人体に与える影響が顕在化する確率が少なくなると考えられるとい
う程度にとどめるべきでしょう。
なお,農産物の原産地表示が全県表示であるから,制限値を超えない農
産物の生産地のものも出荷制限すると広報されましたが, きめ細かい生産
地表示に改めれば解消できる問題です。政府の対応は,風評被害を助長する
ことになりかねません


Q22 出荷制限されたことによる損害は,どこに請求したらいいのでしょうか。

A 出荷制限は,原子力災害対策特別措置法第20条3項による原子力対策本
部長(内閣総理大臣を充てる同法17条1項)の指示です。これは福島第
1原発から外部に放出された放射能汚染に基づく出荷制限ですから,それに
よる経済的損失は原子力損害(Q187)です。従って, 原子力損害賠償
法により原子力事業者に請求できます。


Q23 出荷制限されていない農産物についても,同じ県の農産物だから買わ
ないという風評被害は,どのように救済されるのですか。


A この風評被害は,放射能汚染されているのではないかと思う消費者の不安
心理に基づく買い控えによる損害です。原子力損害賠償法には, 特別
に風評被害を保護する規定はないので,原発の事故と風評被害の間に相当因
果関係が存在するか否かの価値的判断をすることになります。相当因果関
係が認められれば,原子力事業者に対し,損害を請求できます。
ある農産物が食品衛生法の制限値を超える放射能汚染されているので出荷
制限されていると報道されれば,出荷制限された地域の他の農産物も放射能
汚染されていると推測して買い控え行動をとることが必ずしも不合理と考え
られないのであれば,相当因果関係が認められると解されます。放射能汚染
の対象,内容,出荷制限の対象,意味,人体への影響等について,正確で分
かりやすい広報をしていて,放射能汚染をしていると考えるのは消費者の極
めて主観的な心理状態であると考えられ,消費者が買い控え行動をとること
が不合理と考えられる場合には相当因果関係が否定されることもありうる
でしょう。


以上のQ&Aにつきましては、「東日本大震災法律相談Q&A」(日弁連災害復興支援委員会編)より、ご許可を得て引用させて頂きました(一部Q&Aの番号などをサイト運営者の方で変更した部分があります)。

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